大阪府泉南地域のアスベスト被害をめぐり、労働者らが国を訴えた裁判で、大阪地方裁判所は、国の責任を認め、約1億8000万円の損害賠償を命じました。
別の原告が訴えた同様の裁判では、大阪高等裁判所が原告敗訴を言い渡していて、司法の判断が分かれた形になります。
再び開かれた救済への扉。
原告たちの間に歓喜の輪が広がりました。
戦後の最盛期には200ものアスベスト工場が立ち並んだ大阪府泉南地域。
粉じんが舞う劣悪な環境の中、アスベストの危険性を知らされずに働いてきた労働者の多くが、肺がんや中皮腫を患いました。
今、この泉南地域の健康被害について国の責任を訴える“2つの裁判”が行われています。
34人が原告となっている、いわゆる『一陣』訴訟ではおととし、大阪地方裁判所が国の対策の不備を認め損害賠償を命じました。
しかし去年8月、大阪高等裁判所は一転して原告の全面敗訴を言い渡します。
「厳しすぎる規制は産業の発展を阻害しかねない」という判断に、各方面から批判の声があがりました。
【原告】
「国は産業優先で犠牲は仕方がない。この不当判決に腹が立ちました」
原告たちは最高裁判所に上告するとともに、新たに55人が提訴した2つめの裁判、いわゆる『二陣』訴訟でもう一度勝訴を勝ち取ろうと活動を続けてきたのです。
【一陣原告・岡田陽子さん】
「最後には必ず勝つと信じております。不撓不屈の精神で戦い抜きたいと思います」
一陣訴訟の原告のひとり、岡田陽子さん。
幼い頃、母親の春美さんの職場だったアスベスト工場で粉塵を吸い込み、今では24時間、酸素吸入を必要としています。
その春美さんもまた石綿肺を患い、ここ数年は入退院を繰り返す日々が続いていました。
【岡田春美さん】
「裁判もな、あんじょう聴けたらほっとするんやろけど、最後までよう聞かんと目をつむってしまったらどうなるんかなって。私にとったらあの子(陽子さん)がな、自分が(工場に連れて行って)病気させたようなもんやからな。一番それが辛い」
先月4日、春美さんが亡くなりました
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