京都府亀岡市で車が暴走した事件の遺族が民事裁判を起こします。
遺族は運転手以外の責任も問うことで無謀な運転による事故を減らしたいと願っています。
【横山博史さん】
「左右にフラフラして危ないのかなって思いますし。飛び出してくる車もいれば、急ブレーキを踏む車もありますし」
あの日から、これまで以上に車に目がいくようになりました。
横山博史さんはハンドルを握るとき、自然と力が入ります。
【横山博史さん】
「やっぱり人がどれだけ注意して、車を使うかだと思うんですけどね」
横山さんの娘・奈緒ちゃんは去年4月、学校まであと200mのところで、暴走した車にはねられました。
奈緒ちゃんと、友達の小谷真緒ちゃん、付き添っていた妊婦の松村幸姫さんの3人が死亡し、児童7人が重軽傷を負いました。
車を運転していた少年は無免許でした。
2日間ほとんど眠らず遊んだ末に、集団登校の列に突っ込み、ことし9月、懲役5年以上9年以下の不定期刑が言い渡されました。
悲劇をなくしたいという遺族の声を受け、国は、危険運転と過失の罪の間に新たな罪を作るなど、悪質な運転の罰則を強化する法律の改正をしました。
また来月から、無免許運転の罰則が懲役3年以下に引き上げられるほか、無免許と知って車を貸した人や一緒に車に乗った人も新たに処罰の対象になります。
遺族の思いが実現させた法改正。
しかし、罪に問われた少年たちだけの責任なのか、横山さんは疑問を感じています。
【横山博史さん】
「運転していた少年だけが、悪いというふうにはどうしても思えない。以前、無免許と集団暴走行為で捕まって、保護観察がついて、親の管理監督があったと思うんですけど、それがその時点でしっかりしていれば、今回の事故は起こらなかったはず」
保護観察を受けたあとも、少年は無免許運転を繰り返し、亀岡市で事故を起こします。
車を貸した人物も、一緒に乗っていた友人も、みんな少年が無免許と知っていました。
なぜ誰も、無謀な運転を止めなかったのでしょうか。
横山さんは1億円の賠償を求める民事裁判を起こすことを決めました。
相手は、運転していた少年や車の所有者、一緒に乗っていた少年のほか、刑事裁判で責任を問えなかった、それぞれの親など11人です。
【横山博史さん】
「やっぱりそれだけの人間は責任が存在するという風に考えていますんで、知らない、責任がないという風には言わせない」
民事裁判で、億単位の支払いが命じられることも、危険な運転を止めなかった周りの人が、”運転手と同じ責任”と認定されることも珍しくはありません。
ある飲酒運転による死亡事故では、妻の飲酒運転を知っていた夫が、その車に乗っていなかったにも関わらず、妻と同じ賠償を科されました。
【交通事故に詳しい大嶋実弦・弁護士】
「これだけ大きな金額を賠償請求されるということが伝われば、犯罪の抑止に繋がると思いますし、周りの人間も一緒に責任を追及されることは、今後の犯罪抑止という意味あると思う」
あの日から1年7か月が経ち、2人の弟も大きくなりました。
しかし、家族を奪われた苦しみは、今も変わりません。
【横山博史さん】
「一重に同じ思いを人にさせたくない。(事故を)起こした場合に、どうなるのかを知っていただきたい。悪質な運転をしている人が少しでも減れば」
運転することの責任を、みんなで考えてほしい。
裁判には、悲劇を繰り返したくないという想いが込められています。
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