JR西日本の前社長・山崎正夫被告(68)の裁判では、組織的な事故において個人の刑事責任を問えるかどうかがが注目されました。
11日の判決はその難しさを改めて示したと言えます。
検察側は、「山崎被告が『いつかは脱線が起こりうる』という程度に危険性を認識していれば罪に問える」と主張していましたが、裁判所はこれを退けました。
刑事裁判の専門家は次のように指摘します。
【甲南大学・渡辺修教授】
「『大丈夫かな』という危惧感が心に宿ってさえいれば責任になると言われれば過失の範囲が広がってしまう。組織としての責任を個人に肩代わりさせることはできない」
山崎被告”個人”を無罪とした今回の判決ですが、JR西日本の”組織”としての問題点に踏み込んだことがポイントです。
裁判長は「JR西日本の安全対策は脱線のリスクを十分解析したものではなく、日本を代表する鉄道事業者として期待される水準には及んでいなかった」と厳しく指摘しました。
【公共交通の安全に詳しい関西大学・安部誠治教授】
「刑事責任を問う所での『無罪』にすぎない。個々のリスクを評価して事前に安全対策をとるべきと言われたわけで、全国の鉄道業者へのメッセージにもなる」
事故をめぐっては、検察審査会の議決によって強制起訴された井手正敬元相談役ら、歴代3社長の裁判も控えていて、今回と同じ裁判長が審理を行います。
今回、組織の責任を個人に課すことはできないという判断が示されたことから、3社長の有罪の立証も困難になるのではという見方も出ています。
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