ミナト神戸を象徴する光景とのお別れです。三菱重工神戸造船所は100年以上続いた客船や貨物船の建造から撤退することを決め、先日、最後の進水式を迎えました。華やかに鳴り響くブラスバンドの演奏。はるか頭上を見上げる大勢の人。巨大な船が初めて海に浮かぶ進水式です。神戸造船所OB・小林幹弘さん(74)「これで最後かなと思うと、胸が詰まる」造船所はこの進水式で、107年の歴史に幕を下ろそうとしていました。明治38年(1905年)に創業した三菱重工神戸造船所。1600隻もの船を造り、戦後の高度経済成長を支えました。小林幹弘さん(74)は長年、数々の船の設計に携わってきました。神戸造船所OB・小林さん「昭和31~32年頃、日本の造船業がイギリスを凌駕して世界一になった」「技術者としては誇りでしたね」平成元年(1988年)、小林さんがプロジェクトリーダーを務めたのが、日本初の大型クルーズ客船「ふじ丸」でした。きらびやかな内装と豪華な設備を備えた船は、多くの人に夢を届けました。小林さん「客船というのは姿も美しいし」「やりたいことを達成するという意味では文句なかったかなと思います」1分40秒しかし、その後、世界的に需要が低迷し、中国や韓国との競争も激化。神戸造船所は客船や貨物船といった商船の建造から撤退し、潜水艦や原子力事業に特化することを決めました。造船マンは…「これで最後だなという仕事がたくさんあるので寂しさも若干あるんですけど」「我々の技術を形として残していくんだという意気込みで仕事をしています」「造船所の壁には、建造した船の影絵が並ぶ―」「1296番船が最後に―」「今月9日」最後の進水式。約6500人がその瞬間を見守りました。汽笛とともに進水造船マン「どやった?」子ども「かっこよかった」母親「かっこよかったね」造船マン「船がやりたくてこの会社入りましたし」「さみしいですね」小林さん「(造船業が)成長して衰退していく流れの中でやってきたので、思いもひとしおですね」ミナト神戸を象徴する光景は静かに幕を閉じました。
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